第21回 小春日和

  秋の晴れた、暖かい一日のことを小春日和と言いますね。陰暦十月のことですから、陽暦では十一月から十二月上旬にかけての頃。この時季は吹く風も冷たく寒い日が続いたりするのですが、まるで春を思わせるような陽気になることがあります。これを小春日和と呼びます。小春といっても俳句の季語は秋です。逆に「麦秋」(ばくしゅう・むぎあき)は初夏の季語です。
  この日本の「小春日和」に似た天気を、アメリカやイギリスでは「インデアン・サマー」と呼びます。またドイツでは「老婦人の夏」ロシアでは単に「婦人の夏」と言うそうです。
  ヨーロッパでは日本のように「春」ではなく、なぜ「夏」なのかについて「空の名前」(高橋健司文・写真・角川書店刊)という写真集の中に答えが書いてありました。
  この本は、以前私と同じ職場で仕事をした、井村水面(みなも)さんが私の誕生祝に、書店で見つけてプレゼントしてくれたものです。この本は見るだけで心が休まる、いやし系の本で疲れたときに眺めると効き目のある本です。
  つまりこうです。緯度の高い国の春はまだ寒くて、むしろ夏のほうが快適な季節だからだそうです。
  この「空の名前」の中身ですが、雲、水、氷、光、風、季節と六章に分かれており、本の帯にはこう書かれていました。
  「美しい風景は、大自然の中だけにあるのではない。見上げた空に、日の光の中に、そして降り注ぐ雨の中にもある。心の目を、ほんの少し、開いて見ればー。光と水が織りなす調べが、心をゆっくり満たすはずー」

  (この文章は10年ほど前に書いたものです)